昼寝してたらみた物語


 姫様と侍女が風呂に入っている。実際つかってるのは姫様だけ。岩風呂みたいな露天風呂みたいな、そのくせ室内は照明もなく薄暗い。
「あら、雷」
そう言って姫様はシャッターを降ろしたので真っ暗になった。侍女が何故かカンテラに灯をともし、「では姫様お上がりになりますか」「そうしましょう」姫様はスキップしながら風呂場を後にする。


 外では侍女に惚れている侍か何かが風呂を覗こうとしている。とりまきの男の子達はお祭り騒ぎが楽しくて浮かれ狂っている。その中の一人はとうとう強行突破しシャッターを押し上げ風呂場に飛び込んだ。
 脱衣場には浴衣姿の姫様がくつろいでいる。男の子は直に姫様を初めて見たらしい。ひょこりと頭を見せ又ひっこみ、ひょこりと再び頭を出すを繰り返している。姫様はそれがおかしくて可愛くてたまらない。
「とんだ失礼を致しました」
侍みたいな奴が侍女に謝っている。
「良いのですよ」
姫様は男の子の視線を感じながらにこりと言った。
「元気っていいことですよ!」



 侍はやがてふとっちょの大物になる。とりまきの男の子の一人はやせた大物になる。姫様と風呂場に飛び込んだ男の子は歴史の表舞台に出てはこない。「二人とも、一目惚れだったのに」と、腰の曲がった老女が呟く。