数ある宿をおもふ


 京都で格安の宿に泊まったんだけど、それで昔の出来事思い出した。




 初めて一人で宿取ったのは高校三年生の時の受験時だった。家の事情によりそろそろ節約精神が芽生えていた私は浜松医大を受けるのに一番安い宿を頼んだ。今だったら家から通える範囲の大学受けるんだけど。だってあのセンターじゃどこも受からないしなぁ…




 まぁいいや。とりあえず今までの人生からしたら破格の安さの宿にした訳ですよ。今までの宿とは…大きなフロント。大きな土産物屋。荷物を持ってくれるお姉さんに部屋を案内され、大浴場がどこかに必ずある。




 行っておどろいた。
 出てきたのはエプロン姿のおばちゃん。
 外に出れば周りはホームがレスな人ばかり。
 泊まってる客は皆工事関係のおっさんばっか。
 夜中に響くおっさんの太いくしゃみ。
 風呂は男女兼用で一つだけ。
 しかも何故か浴槽がハート型。




 あまりの怖さに風呂に入れずトイレにもろくにいけず、浜松に大量に存在する杉のせいで花粉症にかかり鼻水が止まらず、取り敢えず後期は宿を変える事を決意した。




 余談ですが、後期はホテルを高級化し過ぎたせいで夕飯はフルコース完食まで一時間越え。順番に運ばれてくる食事に楽しむというよりもうんざり気味の受験生達の表情を堪能した。加えて
「受験生のあなたのために大きめの部屋を用意しました」
とかいうホテル側のご厚意のせいで、一人なのにベッドが二つある空間ばかりがだだっ広い部屋に通され、隅っこの机で予備校に入る為に数学を勉強していた。寝る時は一つぽっかりあいた隣のベッドが怖くて、布団の中に荷物を詰め込んで擬人化し、話しかけながら眠りについた。



 今はあん時よりもひどい部屋に平気で泊まれるようになった。夜行バスでも爆睡できるまでに成長した。ワンゲルのおかげかな。でもやっぱ、女一人じゃ無理やな。