豪雪切明温泉

machou2007-03-19


 秋山郷と呼ばれる信州きっての秘境に行って参りました。何というかドカ雪。いや、凄いときは本当に凄いのだろうけど、今年以来初の大雪だったそうで、河原に下る名物露天風呂への道が一夜にして雪に埋まった。



 柔らかい雪なのであっと言う間に蹴散らせるのだけどとかく深い。自画自賛しながら目一杯雪を蹴散らし進むYさん。スコップ(シャベル?)が白に舞う。風呂場から裸のおっちゃんが顔を出し、何やら叫んでいる。



「そこ、崖だから!」


 
 …!!?




 失われた道を探す代償は大きい。




 ところでこの秋山郷、昔平家の落武者がたどり着いた所だとかで、冬になると陸の孤島と化す為秘境中の秘境という訳で。除雪車がおられる現代ではそんな心配もなくなったらしいが、やたら雪が降りまくってた去年は除雪が間に合わず、本当に陸の孤島になったそうだ。


 そんな前知識はあったものの、今は昔、と、たかをくくっていたら驚いた。秋山郷に入ったバスは雪の降り注ぐ山道を行く。その違和感。


 集落らしきものが無い。集落と言ったら大々的に集結した家を連想するが、数件家が続いては人気のない道を行き、再び人家が出現しては大自然に抱かれる。


 人があまりにいない。人がいられそうな場所があまりに少ない。秋山郷では僅かな数の家が集まれば村と呼ばれ、それが広大な大地に胡麻粒のように点在している。今も昔も大して変わらない。開拓されず、されようもなく、しかも大雪の中、停滞してしまった寒村が朧気に霞んで見えた。



 その昔、江戸時代に浅間山が噴火した際に起こった飢饉で、秋山郷でも少なくない被害を被った。秋山郷が出来た源の集落を含め約四つもの部落が全滅したそうだ。地図で見ると今もその跡が残っている。ただし今の季節では雪に埋まってしまって見当もつかないだろうな…なんせ股下高さまで一夜で積もるレベルだ。



 北海道もそうだけど、雪の季節に旅をするときは場所を選ばないといけない。雪は音を吸収し、無音の中にひっそりと見えるのは山と谷ばかり。時々出会う人家は雪で埋まって光すら見えない。人もいない。刹那通り過ぎる旅人にとっては、それが町のすべて。



 何とも淋しい所だった。