らくだの涙

らくだの涙 [DVD]
 モンゴルの映画です。私はどちらかというと、ハリウッドとかの大衆向け映画よりも、こっそり上映されているミニシアター映画の方が好きだ。そら映画全般からみると良い作品ってのは両方から見つかるけれども。



 これは妙は話だった…。出産が大変で、拭い去れない苦しみのせいで、生まれた子供を愛せなくなってしまったラクダの話。子ラクダは母ラクダに拒絶され続け、途中ほろほろ泣いていた。これではいかんという事で、馬頭琴演奏者を呼び、母ラクダの心を癒す儀式を決行する…。



 これの驚く所といえば、ドキュメンタリー映画だったという事だ。最後、母ラクダは奏でられる音楽と、優しく諭すように体を撫でながら歌う女性の声とに癒され、大粒の涙をぽろぽろ落としていた。そして初めて、自分の子供ときちんと向き合ったのだ。



 …ドキュメンタリーですか…。もぅ、奇跡としか言いようがありませんね。そのモンゴルの人々の知恵といい、ちょうどいいタイミングで子ラクダに屈折した感情を抱くに至った母ラクダといい。



 人って。自然って。と深く考える前に、仲睦まじいラクダ親子を見るだけでいつの間にか心が満たされていく感覚も、きっと言葉の分類によらずとも確かな存在を感じるから、多分優しさの所在ってそんなもんで良いんじゃないかな。単に既存する暖かさを表現したい時に、優しいと、人は言うのだろう。



 優しさは人の社会でも、人でない社会でも、確かに自然に抱かれた形で現れているんだ。