看護してておもふ


 小児科と産婦人科の病棟で看護のバイトを始めて数週間たちました。ベルトをしめてなかったのでポンチョのようだととある方に罵られましたが…




 沈黙の内に学ばなければならない事が多い。広い病室で大好きなおばあちゃんもいなくて、言葉も喋れない位小さいあの子の恐怖はどんなもんだったのだろう。一人でトイレに行けないとかいう、見えないものから逃れられている状態の恐怖じゃない。現に彼は一人だった。怒ったように私の手をペチペチ叩きながら泣き、しかたないから看護師さんを呼びに行こうとすると、今度は一人にしないでくれ、と言わんばかりに私の顔をしかと見つめて、泣きわめく。




 いつもにこにこ微笑んでいるお婆さん。傍らには常に旦那さんがいる。ベッドの上にはいつだって、「飲食禁止」と書いてある。私が何となくお茶を配りに行くと、少し悲鳴にも似た形で、私は何も飲めないの、と言った。


 私はあの病室に入ってはいけないんだった。




 それが病院だ。麻酔からさめない母さんの横で、何をするでもなく私は、ただじっと息をひそめて壁を見ていた。

 幾多の沈黙が存在し、その沈黙は最低限の労力で共通して、生きるを叫んでいる。


 それが病院だ。



 その風景を選んだんだ。