なんてことだ…


 ワンゲルの部誌「せせらぎ」は、行った山行の記録として感想も交えて各自分担された所を書くのだけど、この前の合宿での私の分担が最終日だった。




 よりによってブログに一切書いてねぇ!



 松本に向かって下りたからかなぁ。やっぱ信大といい浅間温泉といい、未だにかなり濃厚な関係。記憶があんまり薄まらない内にメモ、メモ。




 山に入ってから四回目の朝を迎えた。とうとう下界に下りる日が来た!ここ辺りまで来ると、下りた後の楽しみに夢が膨らみ始める。山の中では、日常にとって当たり前の物品がない。野菜も肉も食えない。飲み物は殆ど水か作成ポカリ。部長さんとS木さんとで紅茶の話題で盛り上がったりした。絶対飲みたいロイヤルミルクティーを叫びつつ松本に下りる今日この時を待ち望んでいた。




 昔植村直己の話でこんなのがあった。トンカツ屋さんでキャベツばっかりおかわりしている。女の人が興味を持って聞いてみた。「久しぶりなんです」と彼は更にほおばった。


 山では食べられないからねぇ。それにしても。




 トンカツをおかわりするかキャベツをおかわりするかは各自の嗜好によりけりだな。



 とりあえずそんなこんなでかなりウキウキしてた訳です。五日目にもなると山の歩き方も大分慣れてきていた。小屋に流れ込む冷たい水をくみかえ、隊列を組んでさぁ出発。という時に。



「自分の経験上、あんまり重くない気持ちの方が事はするっとうまく行くものなんですよ」
とかいうYさんの言葉が遠くから聞こえた。恋愛系の話をしてるのは知ってた。てことは、うん?うちの事か?重くない?


 …ん?




 何というか。
 何事もそうなんだろうけど、自暴自棄になった人間の精神状態は体にも悪い影響を及ぼします。山は下りる時が危ない。滑るから。だからどんなに疲れていたとしても注意力だけは持続させていなければいけないのだ。特に私はまだ慣れきってはいないから。が。
 それどころではなかった。一応前を見ながら意識は全く別の所をさまよっていた。負のエネルギーばかりが発散されるので疲労も加速する。どうでも良くなって足を投げ出すようにして歩いた。Yさんが心配して休憩の度にやってきては慰めていた。訳が分からなくなって混乱した。滑って足を痛めても、一体それが悔しいからなのか、悲しいからなのか、何だか涙が出てきそうで唇をかみしめた。



 その足の痛みが尾をひいて、左足が余り自由に動かなくなってしまっていた。Sさん達に助けられ他の皆に励まされながらなんとか下りきった。




 私は馬鹿だったなぁ。
 信じる信じないに関わらず、ちゃんと初めから答えは用意されていたのに。状況をちゃんと読み込めばたどり着ける所に答えはあったのに。何より本当に心配してくれてた態度が常に私の前にあったのに。言葉は怖い。例え上辺だけでも影響力は絶大だから怖い。それにしてもこの手の話はうちにとってはちぇすとー。ちぇすとー。



 ここら辺が、最終日にやたら私が足を引っ張っていた全貌ですがせせらぎでは詳しく書かない…(にっこり)



 やたら快適なミニバスで松本に向かいがてらNと夢(山編)を語り、後輩kをからかい、ピザソースを座席にたらしたりした(事故)。宿から浅間温泉に向かう途中にこまくさ寮を発見し一人興奮した。行きたかった温泉には時間制限により入れなかったが、代わりに母と良く行ってた温泉に入ってきた。さすがに昔常連だった小さい公衆浴場には行けなかった。めちゃくちゃあつかったし。



 その夜は、穂高の準備にかり出された皆を後目にkとバキを読み続け、自分の荷物を整理しただけで何も手伝わないまま午前一時に本格的な飲み会に突入。穂高準備のせいでヒステリックなテンションになり隣の部屋から「寝れない」とお叱りを受ける。直後にテンションが急速に下降、倒れる人達が続出し始めたので私も部屋に戻る。




 比較的あっと言う間に、初でかい山の挑戦は、終わったのだった。