君にはまだ分からないのだ

 この世界の美しさを


 そして付随する残忍さを


 世界をみたいと思うなら、風景だけに満足してはならない


 そこには何があったのか


 誰がいたのか


 そしてどんな想いが交差したのか




 私が世界をみたいと思った、その発端は世界遺産の写真であった


 それから視野は広がった


 やがてたどり着いたのは、まだ雄大な自然が残る大陸の、悲しすぎる人の軌跡であった



 君は物事を知らなすぎるのだ



 風景を巡ることをただの楽しみにしてはいけない


 風景はけして優しい表情を保たない


 仮に穏やかな横顔を見たのなら、それは偽りだ


 もしくは君の心が曇っているのだ


 時折、暖かな温もりからはいでて自然の厳しさを、風景に宿る悲しさを、知る



 旅とは、一抹の不安を感傷に乗せて、豊かな心を持っている者にのみ、本当の姿を現す