ただ遠い所へ

 行きたかった。何もかもが鬱陶しくて苦痛で馬鹿らしくて、電車が高速で通り抜ける刹那の恐怖感を常に張り付けていた。


 一見楽しい日常。やれば何でも出来る環境。でも本当に手に入れたいものは泣き叫んでも、爪を立ててひっかいても、手のひらからこぼれ落ちるように遠く、霞んでいく。
 光の射し込む家。見えないものが恐怖だった。何もない骨壺を背中に抱えて言葉を叫べない。どんなに泣いても嘆いても、日差しは暖かい。川の流れは止まらない。大勢の群衆の中で背伸びして手を挙げて、私はここにいる。埋もれない、絶対に埋もれないでいるから、だから見つけて、助けて。助けてよ。えらくなるから。がんばるから。がんばって将来色々な人助けるから、だから気づいて、そして助けてよ。体が沈んでしまうから。お願いだから。


 朽ちおれても日の光は容赦なく優しく降り落ちる。残酷さもすべてひっくるめて、前向きに、生きていくしかない時間の羅列。明日はまた変わらずに穏やかに過ぎていくだろうか。希望を持つには世界は汚すぎる。絶望するには影が薄すぎる。


 世界は、永遠に子供を宿したまま、今も私の中にある。