人身事故

ドア際にたってた。千駄木のホームに入った途端、凄まじい警笛の音、そして急ブレーキ。前から二両目に乗ってた。階段の真下位に止まった。

何かが音として発信される前に、ホームで待っていた人たちの表情で、一瞬で理解した。鞄を取り落とし後ろを向いて口に手をあてている男性が目の前にいた。同じように口に手をあて壁に背中を押し付けるようにしている女の人。口に手をあてたまま止まっていた人たちが、一気に流れて逃げるように消えていく。


ドアの目の前には、ペンのようなものが落ちている。

私から一枚ガラスを隔てた所、まさにそこから飛び降りたか、少なくとも落ちたんだ。



逃げた。見たくない。救出?生きていたのか死んでいたのか、でも二両分にひかれたんだ。


ガラスを隔てた目と鼻の先で、けど速度を微分したら異なる空間で、一人の人が消えた、その瞬間を見てしまった人々と、正にすぐしたに体があるにも関わらず、一切が想像するしかない電車の中の人々。


時間を共有しなければ同じ空間にいた事にはならない。


その人の生を知らないで死を一方的に見たくない。



生きたかったの?
死にたかったの?



少なくともそういう選択は、嫌だよ。