逃げても逃げても


 生まれた時から月を見ていた


 雲に隠れても


 太陽が登っても


 狂おしいばかりに、ついてくる、


 ついてくる、月



 ただ私は妖精に囲まれていたようで


 月明かりの中一人ではねた


 愉快な気持ちで


 用意された舞台は既に汚染されている


 月明かりに照らされていて私は虚構を手にしたのだ


 楽しさなんて何処から生まれるのか分からない。


 何も意味が無かった。


 誰もいなかった。


 虚無は私を取り込んでいた。

 光さえなければ、


 目に写らなければ、


 私は愉快なまま大人になれたかもしれなかったのに。




 逃げて、


 光から逃げて逃げて、


 何も見えずに真っ暗で


 それでも見えない方がましだった


 そんなもの見たくなかった


 みたくなかったのに、


 多分今もひっそりと深淵に根付いている


 通じるのは言葉でなく


 もっと単純に世界は確立されている




 哀願とか、


 悲哀とか、


 言葉はひたすら遠く、遠く、


 おぼつかない足元、


 くずおれて泣き叫んでいる、


 泣き叫んでいる姿があるんだ




 月明かりの下無情にも


 くっきりと照らされて影は、


 かろうじて人の形を保ってる。




 逃げられない。


 月からは逃げられない。


 何処だって追いついてきて、


 汚された舞台を浮かび上がらせる


 ただ愛されたくて、


 愛されたくて手をのばして




 少しでいいから綺麗な姿で


 光の中に立ってみたくて