かぜのたびびと


 音震わせてなく



 冬の空はぴりぴりと張りつめた色を反射する

 生ぬるい風が吹き込むときそこには人が立ちはだかっている

 電車は線路を静かに滑っていく

 乾いた頬の音

 滴る涙と皮膚をつたう足跡




 軌跡は語らずとも何もかも伝えるだろう



 なにも読みとらず草にわけいるだろう

 ならば振り返るな、君は君の中にしかいない

 君は君の見聞きした事しか学ばない

 乏しい思い出の中で

 さえ渡る獣の遠吠えを聴く



 寂しいと、ただ



 おとふるわせてなく