ルワンダ内戦

 この虐殺事件の大元となったフツとツチの対立は、そもそも民族間紛争というよりも、先進国が植民地化を優位に進めるため、支配階級(ツチ)とその他(フツ)に分けてしまった事より生じた軋轢にある。民族を隔てたのは彼らの責任にあらず、しかし彼らは憎み合う歴史を導き出されてしまった。


 あれから十年以上たち、平和になりつつあるルワンダの名前を、内戦というタイトルで新聞に見た。隣国コンゴは近年大規模な内戦を抱え、未だ国中戦火がくすぶっている。それは知っていた。コンゴ独自の問題だと思っていた。しかしどうやら違うのだ。
 ルワンダ内戦勃発時、虐殺の対象とされたツチはコンゴに逃れた。その後体勢が逆転し、復讐を恐れたフツは大量にコンゴに逃れた。ルワンダが平和を取り戻していく中、今度は新たに、コンゴの中の彼らの一部が、争いを始めた。何も変わっていなかったのだ。何も。



 内戦の歴史は多分、遡ればどの国にもある。しかし結果が随分違っている気がする。同じように植民地だった途上国が独立する際に内戦に突入するのはよくある話だ。
 ベトナムという国が、好きだ。なぜかしら、彼らには強い誇りを感じ取れる。社会主義を取り入れながらも独裁に走りにくいのは、権力が完全に三人の人間により分割されているからだろうか。近隣諸国と比べても、ベトナムのみ治安が特に良い。例えば日本人好みのタイやインドネシアなどは、リゾート地を抜かせば貧困と犯罪にあふれている。むしろそちらの方が、彼ら独自の土地なのだ。カンボジアなんてアンコールワットがあっても行く気になれない。彼らが必死に生きている土地で、先進国の観光客としてカンボジアの何も知らず分からずに、大地を歩くなんて出来ない。そんなの無礼だ。
 ベトナムは本当に特殊で、カンボジアポルポトが世界の支持を得ていた時代は、カンボジアに攻め行っていると、完全に四面楚歌であった。でも蓋をあけてみるとカンボジアこそが大変な大量虐殺を繰り返していた。無論、綺麗な戦争など存在しない。ベトナムが何の戦争犯罪を犯さなかったとは言わない。けども、ポルポトが崩壊して後もポルポトを支持するカンボジア国民の、けして少なくない声には、無視できない違和感がのこる。
ポルポトならば、何かやってくれそうだから支持する」


 パフォーマンスが伴えば、虐殺があっても、それで良いのか。
 貧困は、人間の最も本質的な感覚から破壊していくのではないか。


 例えば途上国における教育。役に立たない高度な医療技術をたらふく送り込むよりも、ただ誇りを持って生きろと、子供に堂々と背中を見せられる態度で生きろと、初めはそこからなんじゃないのか。


 世界を敵に回しながらもカンボジア国内のベトナム人と、一部のカンボジア人を守ったベトナムは、やはりどこか、卓越している。