水葬金魚

目にも止まらぬ速さで駆け抜けた

後ろに気を取られている暇もなく

移ろう季節にすら眼もくれず

枯れた木の枝にとどまる鳥の囀り

水の中で凍り付いた金魚

残像の赤は浮かび上がり空をさまよう

ひらりと舞い降りた雪のひとひら

残像の赤は名残を惜しむかのように

白い道を点々と家路に帰る

足跡を残しながらふらふらと


長すぎた冬はかえって喜びをもたらし

忘れられた庭園では道化師が笑う

彼には最早口にする言葉すら奪われて

ひたすら、さまよう、孤独と共に


凍り付いた金魚、水面をくゆりと浮かび、流れる

オフェーリアの最期。

悲劇として生まれ悲劇として去るは人の運命か。

そんなものは分からぬ、ただ残るは深紅の衣

道化師がすくい上げそうして葬ったろうか

帰れ、帰れ、それぞれにある安らぎの地


生命は死して大地を肥やし

過去は抱えて未来を拝む

旅人は帰れ、そろそろ潮時だ

帰れ、帰れ、彼方にある安らぎの地

そう、そこが安らぎの地